©︎武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

映画の感想などというものを、初めて書きます。
打ち合わせの時に時間が空いていたという理由で、(なんの前情報なしに)ふらっと観た映画が、感想を書かなくてはいけないと思うほど鮮烈だったこと。
書く理由はそんなところです。原作ファンの皆さま。原作、そしてアニメ版「響け!ユーフォニアム」すらも未視聴でこのようなレビュー書くことをお許しください。
以下、ネタバレ含みます!!!!

感想

最初の印象は、「なんていい映画なんだ・・・」(語彙力なし)
キャラクターデザインの西屋さんの絵がとにかく可愛い。ぐいぐい引き込まれる映像美(これ重要!)
初回を、川崎チネチッタのLIVE ZOUNDにて視聴できたのは幸いでした。
観終わった後にすぐ打ち合わせが始まってしまったので、余韻を感じる間がなかったことだけが心残りでした。
特典で、イラストカードをいただきました。こちらが絵柄。

なんて素晴らしい絵なんだろう(^ q^) (画像はもらったカードの写真です)

そして、翌日また観てしまいました。
1度目では気が回らなかった部分までチェックでき、1度目の衝撃もそのままに身終える事が出来ました。
2回目は友人も(無理やり)連れて行きました。やった!布教に貢献。
そして、イラストカードもゲット。絵柄はこちら。

これで布教用と保存用ができました。

裏面には、このイラストラフがあります。これもまた素敵です。

 

ところが・・・。
3度目にもらったカードは、違った絵柄でした。

なんという事でしょう。
このカード、よくあるアニメ映画の特典ではない・・・!?

当サイトの感想考察は、この特典イラストを軸に進めたいとおもいます。

 

特典カード考察

ここから先は、あくまで独自解釈として「こういう意見もあるんだなぁ」という雰囲気でお楽しみください。

上のカードを繋げてみると、こうなります。

1枚目(右)でも、イラストは学校の教室だと、裏面のラフに描かれていました。(ファンタジー表現が画面を占めているので若干わかりにい)
2枚目(左)ははっきりと教室内を描いています。

以下、特典イラストのキャラクターを解説したもの。


みぞれ
本作主人公。
青い鳥の少女の方を見ています。
本当ののぞみの方を見ていません。
自分の中にあるのぞみと、青い鳥の少女と重ねてみています。


のぞみ
本作もう一人の主人公。
みぞれを見ています。
鹿が、のぞみに寄り添っています。


青い鳥の少女(みぞれ’)
絵本「リズと青い鳥」に登場するリズを慕う女の子。
物語前半では、のぞみに重なるように描写されていた。
しかし物語後半になって、みぞれに対応するキャラクターだと判明します。
広い大空に羽ばたくべき、みぞれ’(ダッシュ)という存在。


リズ(のぞみ’)
絵本「リズと青い鳥」に登場する主人公。
青い鳥の少女と、みぞれの様子を見ています。
本当ののぞみはこちら。のぞみ’(ダッシュ)です。


鹿(のぞみの取り巻き)
リズからパンをもらっている動物代表。他にもいっぱい動物がいます。ただ、アライグマはリズからパンをもらえませんでした。
のぞみの取り巻きたちの比喩(メタファー)として描かれている。(作中で取り巻きの子達をを動物に例えている描写もあります)

物語冒頭、リズが動物たちにパンを配るシーンがあります。
しかし、アライグマまでパンが足りず、パンが”なくなった”描写の後に、青い鳥を見つけます。
この時青い鳥は、リズからパンをもらったりする施しを受けていません。
ただ、「見つけただけ」なのです。
「見つけられただけ」の青い鳥は、人間の姿に化け、リズの元に現れます。
まるで命の恩人かのように、リズに執着をみせる青い鳥の少女。
ただ、「存在を見つけてもらった」ことだけが、青い鳥の少女にとって嬉しかったのでしょう。


れいな
憧れの先輩、みぞれのことを下から見上げています。
みぞれのことを尊敬している眼差し。
いつか追いつきたい。普段のみぞれのストイックさに共感しているれいな。
尊敬するからこそ、あのとき苦言を呈したのでしょう。


くみこ
今作では、重要な役としては描かれていない。
れいなを見ている(?)


ゆうこ
北宇治高校吹奏楽部の部長。
近い存在なはずなのに、この位置に。
距離をとってみぞれとのぞみを見守っている。


なつき
りりかから「たまご」を受け取っている。
作中で実際に渡されるのはのぞみ。
たまごは「想い」の暗喩だとおもう。
このたまごを託されるなつきはメッセンジャー的存在。
皆の「気持ちの橋渡し」を担っていた。


りりか
イラストカードの中で、一番遠い存在。
中盤からは、みぞれと一番近く描かれていたけれど、心理的距離はやっぱりこのくらい。
本当は直接たまごを渡したいはず。
りりかの存在が、みぞれとのぞみの運命を変えていく。

++++++++++++++
本当にこの説明通りだったら、神イラストですね👏(あくまで妄想です)

イラストカードの配置は、個人的には、みぞれとの距離感なのかなぁとおもいました。
このイラストのポイントは、みぞれは、理想化されたのぞみを見ていて、本当ののぞみは”見ていない”ところです。
一方のぞみは、本当の自分を見てくれているわけではないことを、終盤「フグの部屋」で思い知ります。

「フグの部屋」は、みぞれが誰にも邪魔をされない場所として描かれています。
ところが物語中盤に、新山先生がこの部屋に踏み込んできます。
新山先生「よろい・・・剣崎さんがここじゃないかって」
この時、剣崎さんもみぞれと近い関係であったことが伺えます。

みんなの視線はみぞれに向いていて、それをのぞみが遮る形になっています。
とっても穿った見方ですけど、のぞみがみぞれを何かから守っている。そんな絵に見えます。

まるでリズが、青い少女を手元においておきたかったかのように…。

のぞみ視点で見たリズと青い鳥

素直に映画を見れば、この作品はみぞれが心の枷を解き放つ映画で、読後感スッキリ、のお話なのです。
それではのぞみ視点で見た場合は? と友人が新しい視点をくれました。
のぞみ視点で見たリズと青い鳥は、なんとも残酷で、切ないストーリーになっています。
物語序盤の、”かみて””しもて”の演出(階段ではのぞみが常に上に描かれている)から、終盤にそれが逆転していく様は、確かに見ていて辛いものがありました。
中学の頃、みぞれを吹奏楽部に誘ったのぞみ。そのことを「あまり覚えていない」と言っていた。
劇中の演出は違いました。絵の具で描かれた「記憶」は、どこか頼りなく、あやふやで、色彩でしか覚えていないような描き方でした。
一方のぞみの方は、みぞれの表情、仕草まで、事細かに覚えていました。(確かセリフも違いました)
しっかりと覚えていたのは、実はのぞみの方で、みぞれの方がどちらかというと”忘れてしまっている”ような印象でした。

先の特典イラストカードでも、みぞれはのぞみのことを見ていない、と書きました。
印象的だったシーンは、終盤フグの部屋にて。
のぞみのパーソナルな部分ばかりを褒めるみぞれに対して、「ありがとう」と繰り返すのぞみ。
この「ありがとう」が、虚しい言葉に聞こえてしまいました。
音楽の才能についてまで言及しないみぞれ。「のぞみのフルートが好き」という言葉が出てこなかった。
のぞみは、みぞれが「言わないこと」によって、みぞれの本心を知ってしまったかのようでした。

のぞみが音大を受けると言ったときの周りの反応は、芳しいものではありませんでした。
最初は、みぞれをこれ以上振り回さないでくれる?!というゆうこの言葉通りのお話かと思いましたが、言外には、「お前なんかに音大は無理だ」的なニュアンスがあったのかなぁと。

のぞみ視点でリズと青い鳥を見ていた友人は、「山田監督は”持っている人”だから”持たざる者”にはとことん厳しい」と嘆いておりました。
すごく穿った見方ですけど、こういう反応もあるんだなとおもいました。
たくさんの視点がある。
だから映画は面白いです。

総評

★★★★★
みんなに見て欲しい映画です。
アニメ映画のさらなる可能性を感じました。
一つ、問題があったとすれば、グッズ類が少なくて、お金を落とさせてくれないことでしょうか。
公式設定資料集も、再販待ってます!!

というか、ネタバレありの感想文なんだから、この記事見てる人に勧める意味ないですよね!
見てしまった手遅れの方は、一旦何もかも忘れて、気軽に見てください!